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個展「愛と安心」

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壁画「愛と安心を願って」ライブパフォーマンス(2012年11月製作): image 1 0f 8 thumb 個展「愛と安心」: image 1 0f 8 thumb 個展「愛と安心」 個展「愛と安心」
【展示文】
死ぬために芸術は関係ないんだと言うことを知らない人の話
ある芸術家が自分の死に方を決めた。光あふれる画面が彼の世界でそこに平面も立体もなく筆致は全く感じられない。
失恋と挫折は味わったことのない経験となり画面に印される。少なくとも彼は故郷の上に溶けようとは欲しなかった。体を洗うように歩けるところまで歩きそして妄想と混沌の中で息を止める。場所は砂漠の上が好ましい。
女との関連性、それが彼の欠落している部分。モノトーンと色の世界の間。ペニスと緩慢の境目。彼はそこに何も感じなかった。彼の画面は一人で空を眺めている。色に責任を与えず視覚に束縛されたように。
彼の毛穴の安まる時はなかった。常に自己の探求とその否定で満たされた。
戦争が終わって人々は平和だと謳歌する。あれ程飢えていた人々は平気で陰毛を捨てる。現代のくそが物を携えていられることだけだった。
はたして夢とは何。彼は文化と乱痴気騒ぎに憧れて議論を交わす。彼のペニスは画面とは一致しないのだ。
  出会い
  そして退廃
  絶望
  そしてあきらめ
  更に飛躍
天使の声は目の磁気に同調する。月の磁気は死後の世界と交信する。相互理解の存在しない世界。
唯物思考も形而上学も存在するものの基本。美意識も創造もDNAの中に存在する。詩も言葉の領域を脱しず芸術は都市のけんそうの中から脱しない。
オリーブの実が食べたい。そしてフェタチーズにたまねぎのスライスをたっぷりのせて。女の吐息、胸の感触、そして陰部からのほのかな香り。
彼は一瞬死を躊躇する。
青年時代の熱病ははたして何であったのか。幻想は憑依された勝者となりせんずりをする。やがて来るオーガズムは固い殻の中に閉じ込める。
彼の鼓動は感じられなかった。この世界へ旅立つ時決めたように夢は展開しなかった。純金より金色に輝いていたあの日々は今は錬金術師の手垢のように膿んでいるのだ。
彼は砂の上を歩き出した。誰が青春時代に見る夢。故郷へ向かって歩き出す。
彼は創造に出会ったのだろうか。色が彼のイメージの中でほとばしる。ヴァギナから解放されたペニスのような自由を見つけたのだろうか。
今、誰も彼の腐敗に興味なく意味もなく砂の上に身を委ねていることは噂にすぎない。 
(完)
※この詩は、20代の頃に書いた詩を、後年、修正しつづけた原稿です。

場所:ZAP Gallery B(東京・白金台)
会期:2013年5月17日~26日

 どんなに素晴らしい科学的研究がなされようとも、画期的な商品が発売されようと、未知の生物が発見されようと、すべて自分自身の認識のなかで、繰りひろげられている『長大なファンタジー』。語り尽くせぬものは、沈黙しかない、とヴィトゲンシュタインは言った。だったら、語り尽くせぬ場合、現代アートに置き換えてみた。すると、現代アートとは、新しい化学反応であり、その沈黙から、我々を解き放つ強烈な触媒だったと知る。
 昨年、横13メートルの巨大壁画「安心できる世界を願って」を制作。その壁画が併設されているZAPギャラリーで、個展を開催した。
  今回は、タブロー作品の他に、あおひと君ムービーを制作(26min)。また、イタリア人アーティストのリッツ・モネ氏とコラボ、被災地石巻で制作した映像作品も発表した。
主催:瑞聖寺アートプロジェクト http://www.zuisho-ji-arts.net/
Ryts Monet(リッツ・モネ):1982年 バーリ(イタリア)生まれ。ヴェネツィア大学視覚芸術専攻修士課程修了。世界各地を訪れ、グローバリゼーション下における都市空間と社会問題などに関連する作品を制作する。近年の発表作品に、Open Studio(東京,2013)、Black Flag Revival(Venice,2012)、Class 1993(Shanghai,2012)などがある。HP http://www.rytsmonet.eu/
あお・ひと・きみ――享楽と涅槃の画
Blue, People, and You ―― A Painting between the Jouissance and the Nirvana
 
 青い饗宴が禅寺の白くぬられた壁に描かれる。透きとおったウルトラマリンのひとがたは街ゆく人々の心を浮きたたせる。エーゲ海から地中海にかけてひろがる空の悠久と海の揺籃に抱かれて、哲学的な意思をたたえるホルモン関根の「あお」は生まれた。ヨハネス・フェルメールが東方の記憶をひそませた少女のターバン、フィンセント・ファン・ゴッホが狂気の向こうに見た空。パブロ・ピカソが眼差した慈悲の室やヤン・シャオビンの月の警鐘。あるいは、イヴ・クラインが形式化した空虚とロジャー・ヒオンズが結晶化させた硫酸銅。世界中の文化的な記憶が終着する<歴史の終わり>の国、日本で、「あお」の系譜は引き継がれ、来るべき形態としての人々を顕すだろう。
 
 人々の反原発へのシュプレヒコールは今も止まない。ポスト3.11の局面に入った国内のコンテンポラリー・アートの状況は、コミュニティ・アート*1で百家争鳴の相を呈している。アートをめぐるグランド・セオリーから遠く離れて、人民による人民のための生のアートがニュー・ヒストリーを紡ぐだろう。そこに見られるのは、アートを媒介とした新しい民主体制の萌芽である。誰もが表現し、誰もが語る。原子力発電所のメルト・ダウンに直面して、アートをつくることの享楽は人々のあいだにアソシエーショニズム*2の紐帯を到来させる。情報管理社会における「ひと」としての人民は、アートによってのみその支配環境を逃れ、自由に生きることができるとしたら?
 
 君はいつもそこにいる。ぼくと「きみ」のあいだに。“愛と安心のメッセンジャー”となった「あおひと君」は、どこまでも風狂な世界を駆けめぐる。三味線の激しいビートとフラットな響きにあわせて、誇らしく、力強く、ユーモアと速度をもって。死の暗い気配が占めるこの街で、人々の心に解放への歓びをもたらして。愛することは、まったき他者の世界に身を游ばせること。エロスの導きのさきに、タナトスの静かな壊乱と合一の安らぎを感じること「きみ」はぼくの主となり、ぼくは「きみ」の臣になる。聖も俗もない。ただ愛することの自由が、ぼくを「ひと」として生きさせる。愛と安心のあいだにある享楽と涅槃は、もう一つの世界への解放のモーメントとなる。
 「あお」、「ひと」、「きみ」、ホルモン関根の「あおひと君」は、あらゆるところにやって来る。アスファルトのストリートの亀裂から、整然と植樹された木々の下から、放射線や胞子のようにどこからともなく、地震と津波の圧倒的な力によって壊された沈黙と瓦礫の街にやって来る。地はゆれ、空はまわる。とても近い将来、とても高い蓋然性で大きな地震はまたやって来るだろう。そう、本当に世界は終わるかもしれない。でも、「きみ」となら生きぬけるかもしれない。そして、新しい世界と物語をつくることができるかもしれない。「あお」の天使とともに。だから、ぼくは「きみ」を求める。大いなる畏れとほんのわずかな期待とともに、愛のブルーノートを口ずさんで。   

*1:人々との協働においてつくられるアート *2:共通の関心においてつくられる連帯
*1:Art created in the collaboration with people *2:A solidarity made with a common interests
[提供:F. Atsumi(Art-Phil)/編集・批評][a contribution:F. Atsumi/Editing・Critique]
制作協力:アート・フィル:クリエイション・ユニット。“アート発のカルチャー誌”としてブックレット「Repli(ルプリ)」の発行を中心に活動。アート、哲学、社会の視点から、多様なコミュニケーション一般のあり方を探求しています。HP http://www.art-phil.com/


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